水道水の原料となる河川などには、塩素消毒が効きにくい病原性微生物が混入している場合があります。原虫はその代表的な微生物の一つです。
このページでは、原虫とは何か、どうしたら感染を予防できるのかについて解説します。
原虫とはどういうもの?
原虫は単細胞の微生物です。ゾウリムシやアメーバ等をご存じの方もおられると思いますが、これらも原虫の仲間です。一部の原虫は人や動物に寄生して病気を引き起こします。
原虫は非常に小さく顕微鏡でないと見ることができません。また、原虫の細胞の仕組みはウイルスや細菌よりかなり複雑です。病原性原虫のほとんどは、宿主の免疫を巧みに回避することができるため、有効で安全なワクチンや治療薬がほとんどありません。原虫による感染症は、人々の健康や畜産業界に大きな打撃を与えており、予防治療法の開発が強く望まれています。
飲料水が汚染されている場合は、普通の浄水処理で完全に除去することは難しく、塩素で消毒を行っても抵抗を示すので、感染が拡大するおそれがあります。
代表的な原虫
クリプトスポリジウム
クリプトスポリジウムに汚染された食物や飲料水などを摂取することにより、口から入って腸に寄生します。
症状は、下痢(主に水様下痢)、腹痛、倦怠感、食欲低下、悪心などであり、軽度の 発熱を伴うこともあります。潜伏期間は3〜10日で、大多数の患者は9日以内に発症します。下痢は1日数回程度から20回以上の激しいものまで多様です。
これらの症状は健康状態にも寄りますが、通常は1~2週間で免疫が働き、自然に治ります。しかし、免疫力の低い人、幼児やお年寄りなどは、激しい脱水により死亡することもあります。
クリプトスポリジウムは、宿主に寄生するまではオーシストと呼ばれる殻のようなものに包まれた状態で存在しています。オーシストに包まれたクリプトスポリジウムは飲み水やプールに使用する通常濃度の塩素に抵抗性があるほか、冷凍しても死滅することはありません。そのため、特に水道水やプールを汚染源とした集団感染が発生するおそれがあります。
ウシやブタから頻繁に検出されており、畜産の分野では珍しい病気ではありません。イヌやネコなどからの検出の報告もあります。
ジアルジア
ジアルジアが原因の感染症は世界各地で見られるものであり、アメリカにおいては寄生虫が要因である腸管感染症の中でトップになっています。
ジアルジアはシストと言われる外殻を形成します。これにより、プールなどの塩素でも死ににくくなります。また、10〜25個といった極少量のシストを体内に取り込むだけで感染することも知られています。
ジアルジアをを摂取してから1〜2週間の潜伏期間を経た後に、下痢を主要症状として発症します。下痢は基本的には水様性もしくは泥状便、脂肪便であり、血液が混じることはありません。下痢の回数は数回から20回以上とさまざまです。下痢以外にも吐き気や腹痛が現れることがあります。
免疫が低下した人などは症状が重篤化するおそれがあります。健常者では感染しても無症状の場合がありますが、病原体を周囲にまき散らし感染源となりうるという観点から、集団衛生的には大きな問題となりえます。
ジアルジアは日本の河川や湖にも普通に存在するため、汚染の強い水源から取水すると、水道水に混入する可能性があります。
エキノコックス
エキノコックス症は、虫卵を経口摂取することで感染します。この虫卵は、3.75%以上の濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液を散布し、少なくとも2~3時間放置することで、やっと感染能力を失います。水道水の塩素濃度では効果がありません。また、アルコール消毒や冷凍処理はほとんど効果がありません。
感染から約10年以内は無症状で経過することが多いですが、発症すると肝臓や肺、脳などに重篤な症状が現れます。
肝臓に症状が出ることが多く、肝臓の腫大、腹痛、黄疸、貧血、発熱や腹水貯留などの初期症状がみられます。放置すると約半年で腹水が貯留し、やがて死亡します。現在有効な治療薬がなく、感染した部分の肝臓を切除して、再発を抑える薬を飲み続けるというのが一般的です。自覚症状が出る頃には、肝臓の機能がかなり失われていることがほとんどです。
キタキツネの糞が主な感染源ですが、キツネと同じイヌ科であるイヌも感染源となる可能性があります。
以前は北海道でのみ感染が確認されていましたが、近年本州の動物にも感染が確認されています。本州の動物で初めて感染が確認されたのは青森県です。1999年に家畜市場に出荷されたブタ3頭の肝臓から、エキノコックスが検出されました。2005年には埼玉県北部で、2014年には愛知県の知多半島で、野生のイヌのふんからエキノコックスが検出されました。
青森や埼玉ではその後エキノコックスに感染した動物は確認されていませんが、愛知県知多半島では2021年までに8件、野犬への感染が報告されています。愛知県知多半島にはエキノコックスが定着した可能性が高いと言われています。
エキノコックスの卵は、地面など、私たちの周囲の環境を汚染している可能性があります。 卵に粘着性はなく、洗えばすぐに落ちるので、外から帰ってきたら、必ず手を洗う習慣を身に付けましょう。
原虫による水道汚染の例
クリプトスポリジウムによる水道汚染
英米両国では1980年代中頃から頻繁に、水系汚染に伴う集団発生が報告されています。その中で、1993年に米国ウイスコンシン州ミル ウォーキー市では、40万人を超える住民が感染するという、未曽有の集団感染が起こっています。
日本では、1994年に神奈川県平塚市の雑居ビルで460人 あまりの患者が発生しました。1996年には埼玉県入間郡越生町で町営水道水を汚染源とする集団感染が発生し、8,800人におよぶ町民が感染しました。
日本各地の水道局で対策が進められていますが、また集団感染が起きないとは言い切れません。
ジアルジアによる水道汚染
ジアルジアは1965年に米国コロラド州アスペンで発生した井戸水による感染症ではじめて水系感染することが疑われました。
その後、1974年にニューヨーク州ロームで起きた大規模感染の際に、CDC(アメリカの疾病管理予防センター)によって原水からジアルジアが初めて検出され、水から感染することが証明されました。
最近では2004~2005年にかけて、ノルウェーで1,500人以上の患者を出す大規模な水道水起因の集団感染が発生しました。
原虫による感染症を予防する方法
正しい知識を持っていれば、感染を予防できます。生水をそのまま飲まないこと、飲食の前や帰宅後によく手を洗うことが大切です。
- ハイキングなどで野山に出かけた後は手をよく洗う
- 沢や川などの生水は煮沸してから飲むようにする
- 虫卵や原虫に汚染されている可能性のある飲食物の摂取を避ける
- 野生動物のと接触は避け、触ってしまったらよく手を洗う
- 山菜や野菜、果物などはよく洗ってから食べる
エキノコックスに対しては、上記に加えて次のような対策が必要です。
- キツネを人家に近づけないよう、生ゴミ等を放置せず、エサを与えたりしない
- 犬も感染した野ネズミを食べて感染するため、放し飼いをしない
- 犬を散歩させるときに、野ネズミなどに接触させない
- 犬を散歩させた後は、足の裏等をよく拭く
原虫を除去できる浄水器の利用が安心
先に述べたように、病原性原虫の中には塩素消毒が効かないものがいます。万が一水道水に原虫が混入していると、人への重大な感染源となります。そのため、消毒のみに頼るのではなく、適切なろ過処理による原虫の除去処理が必要です。
家庭でできる対策として、原虫を除去できる浄水器を使用することをおすすめします。浄水器を選ぶときは、どんな有害物質を除去できるのか、性能をよく調べてください。除去できる物質の一覧が各社から出ていると思いますので、確認しましょう。
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参考
池 裕次郎『安全でおいしい水が飲みたい! 浄水器 賢い選び方・使い方』 亜紀書房 2008年