弱酸性のボディソープと石鹸、どっちが肌に優しい?|メリットとデメリットを解説

「アルカリ性の石鹸より弱酸性のボディソープのほうが肌に優しい」「界面活性剤の入ったボディソープより石鹸の方が肌に優しい」など、様々な意見があるようですが、どれが正しいのでしょうか?

私個人の考えとしては、「どちらにも長所と短所があり、肌の状態によって使い分けるのが良い」ということだと思います。

今回は、弱酸性のボディソープと、石鹸の違いについて解説したいと思います。

「弱酸性だから肌にやさしい」とは限らない

原料や添加物による

原料の配合や、保湿剤など添加物の工夫によって、製品の洗浄力や皮膚への刺激性は変化します。

これは石鹸でも弱酸性のボディソープでも同じ事です。アルカリ性の石鹸だから肌に悪い、あるいは弱酸性ソープだから肌に優しい、と簡単に分けることはできません。

石鹸は中和されるが、合成界面活性剤は中和されにくい

石鹸は酸性の物質によって中和され、洗浄力がなくなります。皮脂や汗など、肌の汚れの多くは弱酸性です。これらが肌の上で石鹸を中和するため、洗浄力と皮膚への刺激を程々に抑えることができます。

一方、合成界面活性剤は弱酸性でも洗浄力を発揮するよう調整されている物が多くあります。また、安定性が高く変質しにくいです。そのため皮膚に対して刺激の強い物質が、中々分解されずに留まり続けることになります。

中和によって洗浄力が抑えらると言う点から見ると、石鹸のほうが洗浄力が穏やかで、肌に優しいと言えます。

石鹸はすすぎやすいが、合成界面活性剤は肌に残りやすい

石鹸は水で一定の濃度以上に薄まると、洗浄力(界面活性作用)が無くなります。そのため、簡単に洗い落とす事ができます。

一方、弱酸性・中性の合成界面活性剤は水で薄まっても洗浄力を保つ物が多くあります。そのため、かなり丁寧にすすがないと肌に残る事もあります。

弱酸性のボディソープよりも石鹸の方が肌に残りにくく、その点では肌に優しいと言えます。

弱酸性でも洗浄力を保つため、強力な合成界面活性剤が使われていることも

洗浄成分の多くは、酸性の環境では洗浄力が落ちてしまいます。弱酸性でも十分な洗浄力を確保するには、相当強力な洗浄成分を使用しなければなりません。そのため弱酸性のボディソープには、皮膚に対して負担の大きい、強力な界面活性剤が配合されていることがあります。

一般的な弱酸性ボディソープの洗浄成分は、中性洗剤と呼ばれる合成界面活性剤です。もともと弱酸性なのではなく、ph調整剤を添加することによって、弱酸性にしているのです。

肌に優しい弱酸性の洗浄成分は、カルボン酸系洗浄成分やアミノ酸系洗浄成分のように、もとから酸性のものです。これらの成分はとても高価なため、商品の販売価格も高額なことが多いです(400mlで約2000円の商品もあります)。

それに対して、中性洗剤で作った弱酸性のボディソープはとても安価です。ドラッグストアなどでよく見かけるのは、このタイプです。

石鹸のメリット

洗浄力が高い

アルカリ性の石鹸には、酸性の汚れを中和して落とす働きがあります。汗や皮脂、古い角質(垢)など、肌の汚れの大半は弱酸性のため、汚れをしっかり落とすことができます。

皮脂量が十分ある方、さっぱりした洗い上りが好きな方は、石鹼がおすすめです。

洗いすぎを防止する

弱アルカリ性である石鹸は、酸性の物質に触れると中和されて、洗浄力を失います。また、石鹸は水で一定の濃度以下に薄まると、洗浄力を失います。

このため汚れが落ちた後は洗浄力が抑えられ、洗いすぎを防止できます。また、泡切れも良いです。

皮膚の上に残留しにくい

石鹸は水で薄まるか、酸性の物質によって中和されると洗浄力を失います。

また、残った石鹸カスは皮膚常在菌が分解してくれます。石鹸は中和されることによって、原料の脂肪酸に戻ってしまいます。脂肪酸は皮脂の構成物質にも含まれる成分ですから、自然と分解されるのです。

安価である

石鹸は非常に安価な原料です。石鹸が主成分の商品の価格も、それほど高くありません。

石鹼のデメリット

アルカリが刺激になる

石鹸は弱アルカリ性です。人間の肌は弱酸性のため、アルカリ性の物質は刺激になります。また、目などの粘膜にも刺激が強いです。敏感肌や傷口の洗浄には向きません。

また皮膚のバリアシステムを維持するセラミドや天然保湿因子(NMF)は、弱酸性状態でしか産生されないため、石鹸で肌を洗った後にはこのシステムが一時的に停止します。アトピー体質の人は特にセラミド量が少ないため、アトピー肌には問題になる場合があります。

洗浄力が高すぎる場合がある

皮脂量が少ない乾燥肌の人にとっては、石鹸の洗浄力は高すぎる可能性があります。

弱酸性のボディソープのメリット

肌と同じ弱酸性

肌の健康を維持するには、弱酸性の状態を維持することが大切です。弱酸性を維持することで、皮膚常在菌のバランスが整い、雑菌の繁殖を防ぐことができます。

また、皮膚は弱酸性の条件下で正常に機能するように作られています。例えば、セラミドや天然保湿因子(NMF)は、弱酸性状態でしか産生されません。弱酸性のボディソープであれば、弱酸性を維持したまま洗浄できます。

洗浄力がマイルド

洗浄力は比較的控えめで、必要以上の脱脂は行いません。しっとりめの洗い上りになります。

洗剤自体の刺激が少ない

洗剤自体の刺激も大変弱く、敏感肌でも肌荒れを起こしにくくなっています。目などの粘膜や傷口に入ってもしみないので、使いやすいです。

弱酸性のボディソープのデメリット

洗浄力が弱すぎる場合がある

洗浄力が控えめなので、皮脂が多い人などは洗浄不足になってしまいます。

また、アルカリ性の洗浄剤と異なり、角質を柔らかくする作用がありません。老廃した角質がたまりやすく、垢が出てしまうことがあるようです。

使用感が悪い

泡立ちが弱く、泡切れも悪いです。洗い流したあとヌルッとした感じになるので、好みが分かれるところでもあります。

価格が高い

弱酸性のボディソープの主成分である、カルボン酸系洗浄成分やアミノ酸系洗浄成分は、成分自体の価格が高いです。そのため製造コストが上がり、販売価格も高額になってしまいます。例えば、1000mlで4000円前後、400mlで2000円前後といった商品があります。

弱酸性のボディソープと石鹸、どっちを使うべき?

洗浄力は強すぎても弱すぎてもいけません。また、体を洗う洗浄料は、顔に使うものよりも高めの洗浄力が必要です。

よほど肌が弱くない限り、石鹸がベースの洗浄料で洗うのがおすすめです。しかし、季節の変わり目などに肌が敏感になってしまう方もいると思います。石鹸をつかって肌がつっぱる場合は、カルボン酸系やアミノ酸系の洗浄成分がベースの、弱酸性のボディソープに変えてみましょう。

敏感肌・アトピー肌・乾燥肌の方は、弱酸性のボディソープの方が合う場合があります。今まで石鹸を使っていて、問題が無ければ、そのまま使い続けても大丈夫です。

石鹸の見分け方

石鹸はヤシ油などの「油脂」に、「アルカリ剤」を混ぜて作られます。アルカリ剤が水酸化Na(ナトリウム)の場合は固形石鹸、水酸化K(カリウム)の場合は液体石鹸が多いです。

成分表示のパターンは4種類あります。

①そのまま表

石けん素地、カリ石けん素地、カリ含有石けん素地など。

②脂肪酸とアルカリ剤に分けて記載

ラウリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸/オレイン酸など+水酸化Na/水酸化K

③反応したあとの成分名で記載

ラウリン酸Na、ミリスチン酸Na、ステアリン酸K、オレイン酸Kなど

④油脂とアルカリ剤に分けて記載

  • ヤシ油、水酸化Na
  • パーム油、水酸化K
  • オリーブ果実油、水酸化K
  • 馬油、水酸化K  

洗顔料やボディソープは②のパターンが多く、成分表示の上位に「○○酸」と「水酸化Na」「水酸化K」があれば、ほぼ石鹸といえます。

カルボン酸系の見分け方
  • ラウレス+(4・5・6のいずれかの数字)+カルボン酸Na
  • ラウレス+(4・5・6のいずれかの数字)+酢酸Na
アミノ酸系の見分け方
  • 「ラウロイル」または「ココイル」+メチルアラニン/グリシン/アスパラギン酸/グルタミン酸のどれかを含む

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参考

弱アルカリ性の石鹸の特徴とは?弱酸性ソープとの違いも解説 – MIYOSHI SOAP CORPORATION

弱酸性のボディソープや洗顔料のほうが、弱アルカリ性の石鹸よりお肌に優しいのでは? – 石鹸百科 (live-science.com)

天然保湿因子について (doctors-organic.com)

 長谷川 治 (洗剤・環境科学研究会 事務局次長)『これでわかる!石けんと合成洗剤 50の疑問: あなたは何を使って洗っていますか? 』合同出版 2015年

小澤 貴子 (東京美容科学研究所所長)『賢い化粧品の選び方: スキンケアの正解は、成分でわかる』河出書房新社 2018年